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外注費と給与の違いとは? 税務上の取り扱いや区分の判定基準

外注費とは

外注費というのは、平たくいうと「外部に業務の依頼を行い、その完了をもって対価が支払われるもの」といえるでしょう。具体的にいうと、事務系の仕事であればアウトソーシング、製造業や建設業であれば協力会社への依頼などがこれに該当します。

法令上、外注契約という言葉はあまり見かけませんが、民法上の請負契約がこれに該当するとみていいでしょう。

民法第632条(請負)
「請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。」

この規定において、「仕事」とは労務の結果により発生する結果をいい、有形・無形を問わないこととされています。また、「完成」とは労務によってまとまった結果を発生させることをいい、原則として自由に履行補助者や下請負人を使うことができます。さらに、「報酬」は必ずしも金銭による必要はなく、また、仕事の目的物の引渡と報酬の支払いは原則として同時履行の関係に立つこととされています。

他方、同法第641条(注文者による契約の解除)では、「請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる。」と規定しており、未完成の段階であっても、それまでの補償をすることを条件にいつでも請負契約を解除できるとしています。この部分は労務の対価とされる給与とは大きく異なります。

外注費と給与の違い

会計事務所の普段の実務でもたびたび頭を悩ませるのが、外注費として処理すればいいのか、それとも給与として処理しなければならないのかということです。

特に、建設業を営むお客様がひとり親方に対して行った支払いについては、「これは外注費だよ。もらった方も自分で確定申告すると言っている」などと言われ、簡単に外注費として処理してしまうこともあるかと思いますが、本当にそれで問題はないのでしょうか?

というのは、支払ったお客様の主観で外注費と考えているだけで、実体は他の従業員に対する給与と全く異なるところがない場合には、取り扱いが違ってくる場合が多々あるからです。

外注費と給与の特徴

ここで、外注費と給与のそれぞれの特徴を確認してみましょう。
前述の通り、外注費(請負契約の対価)の特徴は、「従事することによって対価が支払われる」のではなく、「結果を納めることによって対価が支払われる」というところにあります。給与をもらう人に比べると、外注費をもらう人の方が、自由度が高いかわりに責任が重いというイメージでしょうか。

一方、給与については、民法、税法、労働基準法など様々な法令にその取扱いが登場します。

民法第623条(雇用)
「雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。」

出典:e-Gov法令検索『民法』

国税庁 タックスアンサー No.2508「給与所得となるもの」
「給与所得とは、使用人や役員に支払う俸給や給料、賃金、歳費、賞与のほか、これらの性質を有する給与に係る所得をいいます。また、青色事業専従者給与および事業専従者控除も、給与所得の収入金額となります。役員や使用人に支給する手当は、原則として給与所得となります。具体的には、残業手当や休日出勤手当、職務手当等のほか、地域手当、家族(扶養)手当、住宅手当なども給与所得となります。」

出典:国税庁「No.2508給与所得となるもの」

労働基準法 第9条から第11条
「この法律で『労働者』とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下『事業』という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。」
「この法律で使用者とは、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。」
「この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。」

出典:出典:e-Gov法令検索『労働基準法』

給与を一言でまとめると、「給与とは労働の対価」であるということです。つまり、雇用主である事業者からの指示・命令を受けてそれに従事することによって支払われるものなのです。
ここで注意したいのは、あくまで「従事することに対して支払われるものである」ということであり、「成果物や結果について支払われるものではない」というところです。

支払った給与と外注費における税務上の取り扱いの違い

給与と外注費の違いについて押さえたところで、ここからは具体的な税務上の取り扱いにおける違いや注意点を解説していきます。

源泉徴収の要否

給与を支払う人は法人・個人を問わず、受給者の所得税を源泉徴収して国に納める義務があります。この義務を履行しなかった場合、受給者から追徴を行い国に納める必要がある訳ですが、場合によっては本税のみならず、不納付加算税と延滞税というペナルティがかかってくることになります。
これに対し、外注費については弁護士や税理士、デザイナー、講師など一部を除いて(※)源泉徴収義務がなく、対価をそのまま支払うことになります。

※参考:国税庁『No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは』

課税仕入れの可否

給与については事業者に対して支払うものではないため、消費税の課税4要件のうち「事業者が事業として行う」という部分を満たさないため、課税対象外となり、課税仕入れができません。一方、外注費についてはこの部分を満たし、消費税の課税取引になるため課税仕入れができます。

納税者と課税者による考え方の違い

給与の支払者は「源泉徴収義務あり・課税仕入れなし」であり、外注費の支払者は「源泉徴収義務なし・課税仕入れあり」となります。つまり、納税者の立場からすると、給与とするよりも外注費の方が有利な取り扱いとなっているため、外注費に持っていきたくなるのです。

一方、課税側の仕事は良くも悪くも「課税の公平の実現のため、広く国民(自然人、法人とも)の収入についてその一部を国庫に納めさせること」ですので、実質課税を旨としています。そのため、要件に該当しないにもかかわらず、有利な処理がなされているものについては否認し、追徴を行うということになります。なぜなら、本当は給与なのに「請負契約書」なるものを作成するなど形式だけ取り繕って有利な取り扱いをされると課税の公平が保てなくなるからです。
このような事情から、課税側は給与なのか外注費なのかという場面では、給与の側に持っていこうとします。この外注費を給与と認定し、当初の取り扱いを修正させることを「外注費の給与認定」といいます。

つまり、我々納税者側は給与とも外注費とも取れるような取引について外注費として処理した場合、「源泉徴収義務なし・課税仕入れあり」の状態を実現するためには、税務調査で指摘を受けたら「これは明らかに給与ではなく外注費である」という証拠を提示できるようにしておかなければならないのです。もしそれができなかった場合、外注費の給与認定を受けてしまい、源泉所得税と消費税(原則課税)の追徴課税に加え、不納付加算税、過少申告加算税、延滞税というペナルティを課されることになります。

外注費と給与を判断する4つの判定基準

この永遠のテーマともいえる外注費と給与の取り扱いについて、国税庁は「消費税法基本通達」の最初の項目としてこの部分を取り上げています。やはり、外注費とするか給与とするかによって課税仕入れの可否が異なるため、税額に影響を及ぼすためでしょう。
通達は法令とは異なり、国税庁が国税局や税務署などの下位官庁に対して示す命令であるため、直接納税者を縛るものではないのですが、課税側はこれに基づいて判断を行うので、十分に留意すべき事項といえます。

この消費税法基本通達1-1-1では、次の4つの基準を例示し、これらを総合的に勘案して外注費か給与かを判定すべし、としています。

(1) その契約に係る役務の提供の内容が他人の代替を容れるかどうか。
(2) 役務の提供に当たり事業者の指揮監督を受けるかどうか。
(3) まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失した場合等においても、当該個人が権利として既に提供した役務に係る報酬の請求をなすことができるかどうか。
(4) 役務の提供に係る材料又は用具等を供与されているかどうか。

出典:国税庁『個人事業者の納税義務(個人事業者と給与所得者の区分)』

1.代替性

消費税法基本通達1-1-1に最初に例示された「その契約に係る役務の提供の内容が他人の代替を容れるかどうか」とはどういうことかというと、その仕事をしている人に替えて別の人にさせてもいいかどうかということです。
仮に、今仕事をしている人が外注であれば、特に瑕疵がない場合であってもどこかの時点で仕事を区切ってそこまでを契約とすることも可能でしょう。逆に、自社の従業員であれば配置換えは可能ですが、仕事そのものを与えることをやめることはできません。
つまり、事業主の都合で半強制的に仕事から降りてもらうことができる状態で仕事をしてもらっていれば外注費、そうでなければ給与ということです。

2.指揮監督

同通達の2番目に例示された「役務の提供に当たり事業者の指揮監督を受けるかどうか」という部分ですが、これは労働の対価なのか請負の対価なのかの判断において端的にその判断基準を示したものといえます。
なぜなら、労働の対価は「その仕事に従事したことに対するもの」なので、雇用主の指揮監督を受けるのが当然とされているからです。つまり、事業者の指揮監督を受ける仕事であれば給与、そうでなく自由に行うことができれば外注費ということです。

3.報酬請求

同通達の3番目に例示された「まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失した場合等においても、当該個人が権利として既に提供した役務に係る報酬の請求をなすことができるかどうか」は労務の対価と請負の対価の性質の違いを明確に述べている部分です。
すなわち、給与は労働に従事することによってもらえるものであり、結果に対してもらえるものではないというところを例示しているといえるでしょう。
つまり、仕事をした人の責めに帰することができない事象によって成果物が引き渡せなくなった場合において、それまでの仕事の分の金銭を受領できれば給与、受領できなければ外注費ということです。

4.材料や用具の支給

同通達の最後に例示された「役務の提供に係る材料又は用具等を供与されているかどうか」は比較的具体的な判断例です。給与は基本、労務を提供して報酬が発生するものであるため、資材や道具は支給されるのが普通だということでしょう。
つまり、仕事に必要な材料や道具などの支給を受けていれば給与、自己で準備していれば外注費ということです。

おわりに:判例などさらに詳しく知りたい方は、動画で解説しています。

この例示の部分はあくまで例示に過ぎず、本文の考え方のところを中心に理解していくのがよいでしょう。ただ、この本文の考え方も「事業者とは」という部分のほんの一部しか示されていないため、過去の判例などからその足りない部分の肉付けをしていけば良いと思います。この消費税法基本通達1-1-1は優れた判断基準を示していることは疑いのないところですが、あくまで「事業者とは」という判断の入り口の部分にすぎないもの、という位置づけです。

このように、概念的なものはよく分かるのだけれども、実際の事例に当てはめてみるとどう判断すればいいのか分からないということは、税務の現場ではよくあることです。そこで、過去に争われた事例と結果、そしてその判断ポイントを探るという作業が必要になってくるのです。
こういった事例紹介と、それを受けて外注費の給与認定を受けないためにやっておかなければならないこと・絶対にやってはいけないことを1時間のセミナーにまとめました。
会計事務所のお客様とその外注先に追徴課税といった嫌な思いをさせないよう、是非、先手を打つためのヒントを得ていただきたいと思います。

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