相続の知識

お布施の金額の相場や入れ方・書き方 | 法事で渡す際のマナー

故人が亡くなり喪主を務めることになった際、お布施はどのように準備すればよいのでしょうか。
この記事では、そもそもお布施とは何かといった概要から、葬儀や各種法要で必要となるお布施の目安、お布施を渡す際のマナーまでを解説します。最後に、お布施は相続税で控除できることも紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

お布施とは「葬儀や法事・法要で僧侶に渡す金銭」

お布施とは、人が亡くなった際に行われる葬儀や法事、法要などで、僧侶に渡す金銭のことです。
報酬とは異なり、読経してもらったり、戒名を付けてもらったりしたお礼として位置付けられ、僧侶はお布施をお寺のご本尊にお供えします。
そもそも「布施」とは何ら見返りを求めず、自分のものを他人に渡すことを意味します。かつては金銭ではなく、収穫した作物や家にある反物を渡していました。現在「お布施を払う」とは言わずに「お布施を包む」と表現しているのは、そうした古くからの背景が関係していると考えられるでしょう。
なお、お布施を僧侶に渡す際は、奉書紙と呼ばれる半紙に包むか、白い封筒に入れることが一般的で、水引は不要です。また、金額について明確なルールはありません。

お布施の相場はいくら?

お布施の相場お布施はあくまで遺族からの感謝の意を表したものであり、一律いくらといった決まりはありません。しかし、やはり常識的な相場は知っておきたいものです。宗派や地域、お寺などによって異なるものの、お布施を渡す法要ごとに一般的な金額を紹介します。

主な法要の種類は、以下の通りです。

  • 葬儀・お通夜
  • 四十九日法要
  • 納骨式
  • 一周忌法要
  • 三回忌法要(以降、七回忌・十三回忌など)
  • お盆
  • お彼岸

葬儀・お通夜

人が亡くなったとき、通常、最初に営まれるのが、お通夜と葬儀です。お布施は、読経や戒名を付けてもらったことへのお礼の意味合いがあることから、おのずとお通夜や葬儀でのお布施は高くなる傾向にあります。

株式会社鎌倉新書が2022年3月に行った調査によると、寺院や神社などへ渡すお布施の平均費用は22.4万円でした。ただし、割合を多く占めた金額は「1万円以上~10万円未満」で28.4%、次いで「10万円以上~20万円未満」が23.9%となり、全体の半数以上が20万円未満という結果でした。
2020年から発生した新型感染症の影響などにより、葬儀などはシンプルな形となり、参列者も減る傾向にあるものの、お布施の相場には大きな変化は見られないようでした。

出典:株式会社鎌倉新書『第5回 お葬式に関する全国調査(2022年)』

四十九日法要

人が亡くなった後、仏さまの元へ向かうときに行われるのが、四十九日の法要です。四十九日法要でのお布施は、3万円から5万円が一般的とされています。四十九日以降のお布施は、数万円が相場になってくるようです。

納骨式

納骨式は、火葬後骨壷などに入れていた遺骨を、四十九日が過ぎてからお墓などに納めるための儀式を指します。納骨式でも読経をしてもらうため、お布施として3万円程度を渡すことが多いでしょう。

一周忌法要

一周忌は、故人が亡くなってから約1年後(1周年)に行う、最初の年忌法要のことです。一周忌法要にあたって準備しておきたいお布施は、四十九日法要と同じくらいの3万円から5万円が一般的です。会場までのお車代として、5,000円から1万円を併せて渡すこともあります。

三回忌法要(以降、七回忌・十三回忌など)

故人が亡くなってから2年後に行われる年忌法要が「三回忌」です。一周忌の翌年の法要が「三回忌」というのは、命日を迎える回数が亡くなった年を含めて「3回目」になるからです。
三回忌の際に渡すお布施の金額は、地域やお寺などによって、1万円から7万円といった具合に幅があります。もし金額が決められない場合は、寺院や葬儀社などへ目安を聞いてみるのもよいでしょう。

また三回忌以降も、七回忌、十三回忌、十七回忌、二十三回忌、三十三回忌など、基本的には末尾に「3」と「7」が付く回に法要が行われます。しかし三十三回忌ともなると、そもそも故人を知る人々も少なくなってくるため、「弔い上げ(とむらいあげ)」といって故人の最後の法要とされることも多いです。

お盆

お盆は、ご先祖さまが極楽浄土から一時的に帰ってくる期間として考えられている、先祖供養のための恒例行事です。毎年夏に法要を行う場合、お布施は5,000円から1万円が相場です。
ただ、故人が亡くなってから初めて迎えるお盆は「初盆」や「新盆」と呼び、特別に法要を執り行うことも少なくありません。この場合は、3万円から5万円ほどをお布施として渡すことが一般的です。

お彼岸

お彼岸は、年に2回、春分の日、秋分の日のそれぞれを中日とし、その前後3日間をあわせた7日間の期間を指します。お彼岸に自宅へ僧侶を招いて法要を執り行う場合、お布施は3万円から5万円ほどが相場とされています。自宅に来てもらうため、お車代も必要になるでしょう。
一方、お寺で行われるお彼岸会などに参加する場合は、地域や規模などによって、数千円から2万円ほどと幅があります。

お布施でダメな金額はある?

たとえば結婚式などに招待されたときには、「分かれない(別れない)」ことから、頭の数字は奇数を使うのがマナーとされていますが、お布施の場合、よくないとされる金額は特にありません。
ただ「死」を連想しやすい4万円や、「苦しい」をイメージしてしまう9万円は避けたほうが無難ですので、大体3・5・7万円というような金額が多くなります。またあまりにも中途半端な金額もおすすめできないため、端数を繰り上げて準備しておくとよいでしょう。

お布施の内訳

地域などによっては、法要の際に「お布施」とは別に支払うものもあります。お布施の意味合いとは異なるものの、一般的にお布施とまとめて表現することもあるため、それぞれの内容と相場について解説します。

戒名料

「戒名(かいみょう)」とは、故人が亡くなり、仏さまの弟子になったとして、お寺から授けてもらう名前のことを指します。葬儀の場で名付けてもらうことが多く、お墓や読経の際に読んでもらえるでしょう。僧侶に戒名を付けてもらった場合は、戒名料を渡すのがマナーで、相場は約30万円と少し高額なのが特徴です。葬儀の際は、戒名料と読経料を併せて渡すのが一般的です。

戒名料については、下記の記事でも解説しています。

読経料

読経料はその名の通り、法要の席で僧侶にお経をあげてもらったことへのお礼として渡すものです。通常の法要であれば、お布施は基本的に「読経に対するお礼」となります。お布施の相場と同じ3万円から5万円ほどが一般的と考えられます。

お車料

お車料とは、お寺から葬儀会場や自宅など、法要場所まで移動する際、交通費の実費と「わざわざ足を運んでもらったことへのお礼」を込めて、僧侶へ渡すお金のことです。相場は5,000円から1万円程度なので、それを目安に包んでおくとよいでしょう。

お膳料

お通夜や葬儀などの法要では、会食などの食事を用意することがあります。しかし、スケジュールなどの都合上、読経に来てもらった僧侶が会食しないまま退席する場合に渡すのが「お膳料」です。いわば、食事の代わりに出すお心づけと考えられるでしょう。お膳料は、お車代などとは別の封筒に入れ、渡すようにします。

押さえておきたいお布施の基本マナー

ここからは、お布施の包み方や、封筒の書き方など、お布施に関する基本的なマナーについて解説していきます。

お布施の入れ方

お布施は、お車代などとは別に、封筒もしくは奉書紙と呼ばれる紙に包んでから渡します。
封筒を使う場合は、水引の付いていない、白い無地のものか、最初から「御布施」と書かれているものを選ぶようにします。紙幣は、肖像画が印刷されているほうを封筒の表になるように入れるのがマナーです。

一方、奉書紙とは、白くて少し厚手の和紙のことを指します。最初に半紙で紙幣を包んだら、それを奉書紙で、さらに包んでいきます。ここでのポイントとしては、開いたときに肖像画が表側に見えるようにすること、つるつるした面が表になるようにし、裏表を間違えないようにすることです。新札や使用感の比較的少ない紙幣を選ぶことも、相手への心づかいになります。

お布施の書き方

お布施を封筒や奉書紙で包めても、そのまま渡すわけにはいきません。封筒や奉書紙に一定の事項を記載する必要があります。では、何をどこに書けばよいのでしょうか。
表には、封筒や奉書紙の正面中央上部に、縦書きで「御布施」と書きます。紙幣を入れた中袋には、お布施の金額を旧の漢数字で書いておくと安心です。裏面は、右上に金額、左下に氏名、住所などをバランスよく縦書きします。

お布施の書き方については、下記の記事もご覧ください。

お布施の渡し方・タイミング

最後に、お布施をどのようなタイミングで、どう渡すのかという点です。渡すタイミングとしては、葬儀や法要が始まる前のあいさつをするときなどが適しています。もし渡せなかった場合は儀式後でも問題ありませんが、参列者の出入りによって混雑するタイミングでもありますので、なるべくなら早めに渡しておきましょう。
封筒などに入れたお布施は、手渡しすると失礼にあたるため、注意しなければなりません。基本的にはお盆に載せて渡しますが、もしお盆がない場合は、丁寧に袱紗(ふくさ)に包んで渡すとよいでしょう。葬儀会社などではなく、僧侶へ直接渡します。

お布施は相続税の課税対象から控除できる

戒名料と読経料などをまとめたお布施は、相続税法で「葬儀に関する費用」に含められます。そのため、相続税が発生する場合、基本的にお布施が相続税の課税対象財産から控除対象になることは、しっかり覚えておきましょう。そのほか、お車代やお膳料は厳密にいうとお布施とはまた別の費用ではあるものの、これらも葬儀費用として控除可能です。

ただ、注意点として、葬儀や納骨式のお布施は葬儀とひとまとめにして控除できますが、「初七日以降の法要」については【対象外】となります。昨今は、初七日法要を、葬儀と火葬の後に繰り上げて行うこともあります。念のため費用は分けて考えておくと後々混乱がありません。

また、香典返しは、遺族が香典をもらった上で一部を返す考えに基づいているため、控除できません。しかし、香典返しとはまた別に何かお礼をしたり、喪主をはじめ遺族がお供えや生花を購入したりした場合の費用は、葬儀費用として相続税の控除対象にできます。

葬儀費用で控除できる項目については、下記の記事も参考にご覧ください。

おわりに:お布施の金額は、無理のない範囲で渡して感謝を伝えよう

お布施は、戒名料や読経料がメインで、僧侶を通じてお寺のご本尊へお供えされます。地域やお寺などによって金額はまちまちですが、本記事では一般的な目安をお伝えしました。とはいえ、故人の法要は50年後まで執り行うこともありますので、無理のない範囲で僧侶に感謝を伝えられる金額にしましょう。また、お布施は葬儀費用の一部として相続税の控除対象にもなるため、金額はあらかじめメモをして置き、相続専門の税理士法人へ相談してみましょう。

税理法人レガシィは59年の歴史がある相続専門の税理士法人で、経験豊富な税理士が多数在籍しています。相続税対策で不明点や不安な点などがあれば、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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この記事を監修した⼈

税理士法人レガシィ代表社員税理士パートナー陽⽥賢⼀の画像

陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・

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武田 利之税理士法人レガシィ 社員税理士

相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。

<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表

<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表

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