相続の知識

【文例集あり】遺産分割協議書の書き方は?項目別のひな形をご紹介

故人の残した財産の分け方を決める「遺産分割協議」が終わったら、すみやかに合意を得た内容を「遺産分割協議書」にまとめます。この書類に決まった書き方はないものの、被相続人(亡くなった人)の名前と死亡日、相続財産の内容など、絶対に入れておかないといけない内容は決まっています。そこでこの記事では、遺産分割協議書の作成方法を、ひな型を紹介しながら解説します。

遺産分割協議書のひな形

遺産分割協議書には、とくに決まった書式はありません。手書きはもちろんですが、パソコンで書いてしまっても問題ありません。ただ、どんな書式でもいいといわれると逆に難しいかと思います。まずは次のひな型を中心に考えてみてください。

遺産分割協議書

こちらの遺産分割協議書テンプレートは下記よりダウンロードできます。

遺産分割協議書に必要な項目

遺産分割協議書に必要な記載事項は次のとおりです。

①タイトル
②被相続人の名前と死亡日
③相続人全員が遺産分割内容に合意していること
④各相続人が承継する相続財産の内容
⑤各相続人が承継する債務の内容
⑥後日判明した財産の内容
⑦後書き
⑧協議成立年月日
⑨相続人の署名・捺印

【項目別】遺産分割協議書の文例集

遺産分割協議書の記載事項について、上の①〜⑨の順でそれぞれの文例を紹介します。

①タイトル

「遺産分割協議書」と記載します。

②被相続人の名前と死亡日

遺産分割協議書に続いて被相続人についての情報を記載します。

―――――――――――――――――――――――――――――――――

被相続人 レガシィ太郎(昭和〇〇年〇〇月〇〇日生まれ)
死亡日  令和3年1月1日
本籍地  ●●県△△市△△〇丁目〇番地
最終の住所地 ●●県△△市△△〇丁目〇番地〇号

―――――――――――――――――――――――――――――――――

亡くなった人の氏名、死亡年月日、本籍地、最終(最後)の住所を戸籍謄本と除票から記載します。

③前書き

前書きは、被相続人と相続人を特定するものです。亡くなった人が誰なのか、相続人が誰なのかを明らかにし、相続人が内容に合意していることを示します。例としては次のようなものがあります。

―――――――――――――――――――――――――――――――――

【記載例1】

被相続人 レガシィ太郎(令和3年1月1日死亡)の遺産相続について、相続人である被相続人の妻 レガシィ花子、被相続人の長男 レガシィ一郎、被相続人の次男 レガシィ二郎の三名で遺産分割協議を行い、次のとおり分割することに同意した。

―――――――――――――――――――――――――――――――――

【記載例2】

被相続人 レガシィ太郎の遺産については、同人の相続人全員(レガシィ花子、レガシィ太郎、レガシィ二郎)において分割協議を行なった結果、各相続人がそれぞれ次の通り遺産を分割し、取得することに決定した。

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④各相続人が承継する相続財産の内容

遺産分割協議書のメインになる部分です。どの相続人がどの財産をどれだけ取得するかを具体的に記載します。

―――――――――――――――――――――――――――――――――

【記載例1】

1. 相続人 レガシィ花子は次の遺産を取得する。
<土地>
所 在 〇〇市〇丁目
地 番 〇番
地 目 宅地
地 積 220.00㎡

<建物>
所 在 〇〇市〇丁目〇番地
種 類 居宅
構 造 木造瓦葺2階建
床面積 1階 60.12㎡
    2階 45.5㎡

2. 相続人 レガシィ一郎は次の遺産を取得する。
<現金>  5,000,000円
<預貯金> 〇〇銀行〇〇支店 普通預金
      口座番号:〇〇〇〇〇〇〇〇
      △△銀行△△支店 定期預金
      口座番号:△△△△△△△△

3. 相続人 レガシィ二郎は次の遺産を取得する。
<株式>  □ □ 株式会社 上場株式 1,000株

<自家用車>
名義人      〇〇〇〇
自動車登録番号  多摩〇〇〇あ〇〇-〇〇
車台番号     第〇〇〇〇号

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【記載例2】

(一棟の建物の表示)
所  在    〇〇市△丁目〇番地
建物の名称   〇〇マンション

(専有部分の建物の表示)
家屋番号    △△市〇丁目〇番地〇
建物の名称   △△マンション
種  類   居宅
構  造   鉄骨造5階建
床面積     1階部分 80.00㎡

(敷地権の目的である土地の表示)
土地の符号  1   
所在及び地番 〇〇市△丁目〇番
地 目 宅地
地 積 80.00㎡

(敷地権の表示)
土地の符号  1
所在及び地番 〇〇市△丁目〇番
敷地権の割合 〇分の〇

―――――――――――――――――――――――――――――――――

不動産については、登記事項証明書の記載のとおりに記載する必要があります。
登記事項証明書は、全国どこの法務局でも取得することができます。
預貯金の場合、銀行名と支店名、口座番号をもれなく記載してください。

不動産などは、別紙に「物件目録」と題して記載することも可能です。

⑤各相続人が承継する債務の内容

被相続人に借金などの債務があった場合は、これを誰が相続するかについて遺産分割協議で決めた内容を記載します。たとえば、次のように記載してください。

―――――――――――――――――――――――――――――――――

【記載例1】

レガシィ花子が相続する遺産には、被相続人のすべての債務が含まれる。また、レガシィ花子は、被相続人の債務の弁済について、相続人 レガシィ一郎とレガシィ二郎に対して求償しない。

―――――――――――――――――――――――――――――――――

また、被相続人が金融機関に借入金がある場合の記載方法は、以下のようになります。

―――――――――――――――――――――――――――――――――

【記載例2】

被相続人の〇〇銀行に対する令和元年10月25日付 金銭消費貸借契約に基づく借入債務については、レガシィ花子が承継する。

―――――――――――――――――――――――――――――――――

被相続人が複数の借入金を有していた場合、あとから読んでその内容を区別できるように記載にしておく必要があります。

⑥後日判明した財産の内容

遺産分割協議を行ったあとで新たな財産が発見されるケースは珍しくありません。
そこで、話し合いを行った時点で判明していなかった財産が発見された場合の対処方法を事前に決めておき、遺産分割協議書に記載しておくことができます。のちの紛争を回避することにつながります。
たとえば「特定の相続人が取得する」「新たな遺産の分割についてだけ全員で協議する」なども可能です。それぞれ次のように記載しましょう。

【記載例1】

本協議書に記載のない遺産および後日判明した遺産については、相続人 レガシィ花子がすべて相続することとする。

―――――――――――――――――――――――――――――――――

【記載例2】

本協議書に記載のない遺産および後日判明した遺産については、その分割方法については別途協議する。

―――――――――――――――――――――――――――――――――

⑦後書き

遺産分割協議が成立したことに加え、1通または相続人の人数分作成したことを記載します。

―――――――――――――――――――――――――――――――――

【記載例】

以上のとおり、相続人全員による遺産分割協議が成立したので、本協議書を3通作成し、署名押印のうえ、各1通ずつ所持する。

―――――――――――――――――――――――――――――――――

⑧協議書の成立年月日

続いて、遺産分割協議の成立年月日を記載します。

―――――――――――――――――――――――――――――――――
令和〇〇年〇月〇日
―――――――――――――――――――――――――――――――――

⑨相続人の署名・捺印

すべての相続人が遺産分割に合意したことを証明するために、全員が署名して実印を捺印します。記名でも有効ですが、のちのトラブルを避けるために相続人全員で署名することが望ましいです。捺印はその人の住所地の市区町村役場(役所)で印鑑証明を受けた実印を使用し、印鑑証明書を添付します。

―――――――――――――――――――――――――――――――――

【記載例】

住所 東京都△△区△△〇丁目〇番地〇
相続人 妻    レガシィ花子(署名)  実印

住所 神奈川県〇〇市△△町〇丁目〇番地〇
相続人 長男   レガシィ一郎(署名)  実印

住所 埼玉県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号
相続人 次男  レガシィ二郎(署名) 実印

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遺産分割協議書の作成は誰に依頼できる?

遺産分割協議書は相続人が作成しても問題ありません。しかし、相続税の申告などにも必要な書類なので、不備があるとのちのち困ることになります。自信がないようであれば、専門家に依頼することも検討しましょう。
遺産分割協議書の作成を依頼できる専門家には、次の士業があります。

  1. 弁護士
  2. 司法書士
  3. 行政書士
  4. 税理士

以下、それぞれに依頼すべきケースを説明します。

①弁護士

弁護士には、協議書の作成のみでなく、相続人間の協議がまとまらなかった場合などに、遺産分割協議全般のサポートを受けることができます。ただ、「遺産分割協議書の作成のみ」という依頼を受けつけていない弁護士もいるので、まず事前に確認しましょう。
とくに対立する相続人がいて遺産分割の話し合いが難航している場合には、弁護士に依頼することで、法律の観点から的確な助言をもらうことができます。

なお、遺産分割協議書作成の弁護士費用には、通常、遺産分割協議の費用までが含まれています。そのため司法書士や行政書士に依頼するより高額になります。

②司法書士

遺産分割協議が成立した場合、司法書士に遺産分割協議書の作成だけを依頼することもできます。
司法書士事務所は近年、相続手続きのパッケージプランを設定している場合も多く、遺産分割協議書の作成もそのプラン含まれるケースがほとんどです。不動産の相続手続き(相続登記)は、行政書士にはできない業務なので、遺産のなかに不動産が含まれている場合は、相続登記と遺産分割協議書の作成をその司法書士に依頼することで料金が安くなり、手間も省けます。

③行政書士

協議書の作成だけ依頼したいという場合は行政書士が最適です。弁護士や司法書士と比べ料金が安価であることが利点です。
とくに分割協議のトラブルなどもなく、遺産のなかに不動産が含まれていない場合には、行政書士に遺産分割協議書の作成を依頼するとよいでしょう。

④税理士

最後に私たち税理士のお話です。税理士は相続税申告時に遺産分割協議書の添付が必要な場合において、作成することができます。税理士が作成する際には、節税に有利な遺産分割のアドバイスなども実施したうえで作成することができますので、「できるだけ節税をして相続人間で遺産を分配したいが、方法がよく分からない」など、税務面でのお悩みがある場合は税理士にご相談ください。
一方で、相続税申告が必要ない方の遺産分割協議書のみの作成については、法律によりできません(ただし、税理士の中でも行政書士として登録している人は単独で作成することも可)。また遺産分割協議において相続人間で揉めている場合の交渉なども、弁護士のみができる業務となっています。

各相続手続きの代行を誰に頼めるのかについては、以下の記事も参考にご覧ください。

遺産分割協議書に関するよくある質問

遺産分割協議書に関するよくある質問をまとめました。

Q1.保管方法は?
Q2.割印は必要か?
Q3.表紙は必要か?
Q4.用紙のサイズは?

以下、それぞれ詳しく説明します。

Q1.保管方法は?

相続人の人数分を作成のうえ、各自が原本を1部ずつ保管します。

相続財産が不動産のみの場合、不動産を相続する相続人が相続登記のために原本を、残りの相続人はコピーを保管するというケースもあります。
なお、遺産分割協議書の信用力をさらに高めるため、公証役場で公正証書にする場合、遺産分割協議書の原本は公証役場で20年間保管されます。

Q2.割印は必要?

割印はなくても有効ですが、複数の文書が同一内容であることが保証されるのでのちのトラブルを避けることができます。

割印の押印は遺産分割協議書を1通ずつずらして重ね、相続人全員がすべての書面にまたがるように押印します。また、遺産分割協議書が2枚以上の複数ページになる場合は、「契印」が必要となります。ページとページの間に実印を押します。

 割印・契印

Q3.表紙は必要?

必須ではありません。

遺産分割協議書の表紙は、あってもなくてもかまいません。
表紙をつけることで「表紙をめくらなければ中身を見られることがない」「文面が汚れずにすむ」「体裁が整う」などのメリットがあります。

Q4.用紙のサイズは?

規定はありません。

用紙サイズは決まっていませんが、保存や提出書類として使いやすいA4サイズかA3用紙で作成するのが一般的です。

おわりに:遺産分割協議書は例文を見ながら作成するのがおすすめです

遺産分割協議書には、指定された書式はありませんが、記載すべき項目は決まっています。
遺産分割協議書は相続の手続きをするために法務局や税務署、金融機関へ提出する必要があるので、基本的には作成しなければいけません。ひな型をもとに文例集を見ながら作成するようにしましょう。
遺産分割協議書のひな型はここに記載したもの以外にも、インターネットを介して無料で入手できます。使いやすいものを探して、それを活用しても良いと思います。書き上げたら遺産分割協議に相続人全員が合意したことを証明するために、署名のうえ実印を押印し、相続人が1部ずつ保管します。
相続する財産の記載方法や、割印・契印など、注意しなければいけないポイントもいくつかあります。正しく書けているか不安に思う人や時間がない人は、専門家のサポートを受けることをおすすめします。

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この記事を監修した⼈

税理士法人レガシィ代表社員税理士パートナー陽⽥賢⼀の画像

陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・

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武田 利之税理士法人レガシィ 社員税理士

相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。

<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表

<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表

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