相続の知識

贈与税がかからない方法とは?贈与税が非課税になるケース8選をご紹介!

財産を無償で渡すことを「贈与」といいます。これは親から子へ、あるいは祖父母から孫へ、夫から妻へ(あるいはその逆)といった場合にも当てはまります。そして、その個人間の贈与の額によっては「贈与税」を支払わなければならないケースも生じてきます。
親子間や夫婦間の贈与の1つの目的として、相続税の負担を減らすことがあるといえます。それを「生前贈与」といいますが、相続税の負担を減らしたいにもかかわらず、贈与税が発生すると目的が果たせなくなります。かといって、支払い義務があるにもかかわらず、申告を怠るとペナルティが与えられることになります。では、その贈与税の負担を減らす方法はないのでしょうか?
じつは贈与税にはさまざまな特例があり、それを上手に活用することで負担を軽減することができるのです。この記事では、贈与税がかからない方法を解説いたします。

贈与税とは財産を贈与された場合に課せられる税金

国税庁では「個人から財産をもらった時にかかる税金」と贈与税のことを位置づけています。また、自身が保険料を負担していない生命保険金を受けとった場合や債務などの免除によって利益を受けた場合も贈与とみなし、課税対象とします。
「個人から個人」には親から子、祖父母から孫、夫から妻という関係も含まれます。「家族の間でお金のやりとりをするのに税金がかかるの?」と思う方もいるでしょうが、これは税法で決まっていることなのです。

ただし、すべての贈与に対して課税が行われるわけではなく、さまざまな非課税枠を利用することで支払う必要をなくすことができたり、支払うにしても負担を軽くしたりすることができます。また、そもそも課税対象にならない贈与もあります。贈与税について理解を深めておくことは生前贈与の観点からみても、とても重要なことになるわけです。

贈与税は110万円を超える受贈額に課せられる

まず「年間110万円以下の贈与なら贈与税を払わなくてもいい」ということは基本的なポイントとして押さえておきたい知識です。
贈与税は原則として「暦年課税」という方式で算出します。1年間(1月1日から12月31日まで)に贈与を受けた額に対して課税をしていくというもので、この場合、非課税枠として年間110万円が設定されています。つまり110万円以下の贈与の場合、贈与税はゼロとなります。

一つ注意が必要なのは、贈与を受けた「合計額」に対して控除されるのが110万円ということです。例えば、父親と母親からそれぞれ100万円を贈与された場合、両親からの贈与額はそれぞれ110万円以下で非課税枠内に収まると考えがちですが、この場合は合計額の200万円から110万円を控除した(差し引いた)額の90万円に贈与税がかかってくるということになります。もし父親から100万円を贈与された翌年に母親から100万円を贈与してもらえば、贈与税はかかりません。

贈与税の計算方法

次に贈与税の計算方法ですが、非課税枠の110万円を超えた分の金額で計算をします。暦年課税の税率には「特例税率」と「一般税率」の2種類があります。贈与者が誰かということや贈与された額によって税率や控除額が変わってきます。

特例税率は「直系尊属からの贈与」に対して適用される税率です。両親や祖父母が贈与者(財産を与える人)、子どもや孫が受贈者(財産をもらう人)というケースが該当します。この場合、贈与を受けた年の1月1日時点で子ども・孫は20歳以上である必要があります(20歳未満の場合は、一般税率が適用されます)。

特例税率

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10% 0円
200万円超400万円以下 15% 10万円
400万円超600万円以下 20% 30万円
600万円超1,000万円以下 30% 90万円
1,000万円超1,500万円以下 40% 190万円
1,500万円超3,000万円以下 45% 265万円
3,000万円超4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円

一方の一般税率は「直系尊属以外からの贈与」に適用されます。例えば配偶者や兄弟姉妹からの贈与がこれに該当します。また、直系尊属からの贈与であっても、子ども・孫が未成年の場合は一般税率が適用されます。

一般税率

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10% 0円
200万円超300万円以下 15% 10万円
300万円超400万円以下 20% 25万円
400万円超600万円以下 30% 65万円
600万円超1,000万円以下 40% 125万円
1,000万円超1,500万円以下 45% 175万円
1,500万円超3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円

ここでは特例税率を使って贈与税の算出例を出してみましょう。

<30歳の男性が父親から500万円の贈与を受けた場合>

①課税価格の算出

課税価格は贈与額から基礎控除額の110万円を差し引いた額です。

【500万円−110万円=390万円(課税価格)】

②税率と向上額の確認

上記の表を参照すると、課税価格390万円に対する税率は「15%」、控除額は「10万円」です。

③贈与税額の算出

課税価格に該当する税率をかけ、控除額を差し引くと贈与税額が算出されます。

【390万円×15%−10万円=48万5,000円(贈与税額)】

贈与税が非課税になるケース8選

上記の「年間110万円の非課税枠」のように、贈与税がかからない仕組みを活用すれば、税負担は大きく軽減されます。ここからは贈与税が非課税になる次の8つのケースについて見ていくことにしましょう。

①生活費や教育費の贈与
②年間110万円以下の贈与
③配偶者への贈与
④相続時精算課税制度
⑤住宅資金贈与
⑥教育費の一括贈与
⑦結婚・子育て資金
⑧障害者への贈与

①生活費や教育費の贈与

生活費や教育費など暮らしのなかで必要なお金に対しては、原則として贈与税はかかりません。親が子どもの成長を支え、生活の面倒を見るのは当然のことですから、生活や教育にかかるお金に課税をするのは適切だとはいえないためです。また、夫婦間においても互いに助け合いながら生活をしていくため、やはり生活費への課税は適切ではありません。したがって、暦年課税の非課税枠110万円を超えた場合でも問題はありません。
例えば大学に進学した子どもへの仕送りとして、年間150万円がかかったとします。非課税枠は越えますが、仕送りは生活費ですから贈与税の対象にはならないのです。また、結婚費用や出産費用なども通常必要と思われる範囲内であれば贈与税はかかりません。

②年間110万円以下の贈与

すでにふれたように、年間110万円の贈与なら非課税枠内に収まるので贈与税の支払い義務は生じません。贈与を行うなら、毎年110万円以下に抑えることがポイントといえるでしょう。
ただし「毎年同じ人物から同じ時期に同じ額を贈与されている」場合、税務署から「定期贈与」と判断される可能性が高くなります。
例えば父親が娘の誕生日に100万円を10年間にわたって贈与した場合、「最初から1,000万円を贈与する意図があった」と税務署は考えるのです。この場合は贈与税の対象となります。こうした事態を避けるには贈与額や贈与の時期を変更することがポイントとなります。

③配偶者への贈与

婚姻期間が20年以上の夫婦であれば、居住用の不動産あるいはその購入のための資金は2,000万円までが非課税となります。これは通称「おしどり贈与」と呼ばれる制度で、暦年課税と併用をすれば2,110万円までの贈与を非課税とすることができます。
なお「婚姻」とは法律上において認められた結婚のことなので、事実婚の場合は使えない点に注意しましょう。

贈与は「夫から妻へ」でも「妻から夫へ」でもかまいません。ただし、贈与を受けた人は翌年3月15日までに贈与された不動産、または贈与された資金で購入した不動産で生活を始める必要があります。なお、この制度を使うには贈与税の申告が必要です。たとえ非課税枠の適用で贈与税の支払いがゼロになった場合でも、申告はしてください。

④【2023年最新情報】相続時精算課税制度

のちに相続が発生した時に相続税の課税対象とすることを条件にした課税方式が「相続時精算課税」です。原則として60歳以上の両親あるいは祖父母から20歳以上の子または孫が受けとった財産の合計額から、2,500万円までは特別控除額として差し引くことができます。したがって2,500万円以下なら贈与税はかからないということです。

2,500万円を超えた場合は、その分の額に対して一律20%の税率が課されます。例えば3,000万円の贈与の場合、課税対象は特別控除額を差し引いた500万円となり、その20%の100万円が贈与税となるわけです。
非課税枠は大きいのですが、相続時精算課税は「相続時までの納税の先送り」であり、基本的に節税対策にはなりません。

この制度を使うには贈与税の申告が必要です。たとえ非課税枠の適用で贈与税を支払わなくていい場合でも申告はしてください。また、一度相続時精算課税を選択すると、それ以降は同じ贈与者からの贈与に置いて暦年課税が使えなくなるので注意が必要です。

 【2023年最新情報】相続時精算課税制度の見直し 

2022年12月16日に発表された「令和5年度 税制改正大綱」によって、相続時精算課税制度を選択した場合における制度の内容が以下の通り見直されることが決まりました。

①相続時精算課税の特別控除額2,500万円とは別に、基礎控除110万円が創設
②相続までに贈与財産が災害被害を受けた場合、相続時の財産評価額は再評価となる

適用時期は【令和6年(2024年)1月1日以降】です。


この見直しにより、より多くの人が相続時精算課税制度を活用しやすくなるのではないでしょうか。
詳細は下記の記事をご覧ください。

⑤住宅購入資金の贈与

マイホームを購入する子や孫に対して資金面でサポートを行う際に活用したいのが、「住宅取得等資金の非課税の特例」です。2021年4月1日以降に住宅の取得に関する贈与があった場合は、最大1,500万円までが非課税となります。
なお、非課税限度枠はマイホームの購入時期や消費税率、住宅の性能(耐震性やバリアフリーなど)によって変わってきます。以下の表を参考にしてください。

消費税が10%の住宅を取得した場合の非課税限度枠

住宅用家屋に係る契約の締結日 一般の住宅の場合 省エネ等の住宅の場合
2019年4月1日~2020年3月31日 2,500万円 3,000万円
2020年4月1日~2021年12月31日 1,000万円 1,500万円

上記以外の住宅を取得した場合(個人間で住宅を取得した場合など)の非課税限度枠

住宅用家屋に係る 契約の締結日 一般の住宅の場合 省エネ等の住宅の場合
~2015年12月31日 1,000万円 1,500万円
2016年1月1日~2020年3月31日 700万円 700万円
2020年4月1日~2021年 12月31日 500万円 1,000万円

⑥【2023年最新情報】教育資金の贈与

例えば入学金や授業料、学用品の購入、修学旅行の費用など教育に関わる資金の一括贈与の場合は1,500万円までが非課税となります。ただし塾や習い事、通学のための定期券代などは非課税枠は500万円までとなります。対象となるのは令和5(2023)年3月31日までに30歳未満であり、両親や祖父母から資金を贈与された人たちです。

この制度を使う場合は贈与を受けた人が金融機関で「教育資金口座」を開設しなければなりません。金融機関を経由して税務署に届け出ることになるので、贈与された資金の管理はこの口座で行います。必要に応じて引き出せますが、その際には金融機関に教育費用の領収書を提出することになります。

 ※ 2023年最新情報 

令和5年度税制改正大綱により、教育資金贈与の非課税制度において以下の内容が変更となりました。
● 適用期限が3年延長(2023年3月31日→2026年3月31日)
● 贈与された資金が30歳までに使いきれなかった場合、残額にかかる贈与税の税率は受贈者の年齢により「特例税率」か「一般税率」を判断だったが、改正後はすべて「一般税率」へ統一
● 贈与者が死亡した際の残額は相続税の課税対象、ただし対象外の条件(① 23歳未満である場合 ② 学校等に在学している場合 ③ 教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受けている場合)に該当すれば課税されない
→ 対象外となる条件に該当しても、相続税の課税価格が5億円以上ある場合は課税

⑦【2023年最新情報】結婚・子育て資金の贈与

子どもの結婚や子育て(孫)に使うために一括贈与された資金に対しては、1,000万円までが非課税となります。ただし、結婚のための資金の非課税枠は300万円までです。
対象となるのは、令和5(2023)年3月31日までに20歳以上50歳未満で、両親や祖父母から資金を贈与された人たちです。

この特例を使う場合は、受贈者が金融機関で「結婚・子育て資金口座」を開設しなければなりません。金融機関を経由して税務署に届け出ることになるので、贈与された資金の管理はこの口座で行います。必要に応じて引き出せますが、その際には金融機関に結婚・子育て費用の領収書を提出しなければなりません。

 ※ 2023年最新情報 

令和5年度税制改正大綱により、結婚・子育て資金贈与の非課税制度において以下の内容が変更となりました。
● 適用期限が2年延長(2023年3月31日→2025年3月31日)
● 贈与された資金が50歳までに使いきれなかった場合、残額にかかる贈与税の税率は、特例税率 → 一般税率へ変更

⑧障害者への贈与

障害者に贈与をする場合の非課税枠は、3,000万円または6,000万円です。
3,000万円までが非課税となるのは「特別障害者以外の特定障害者」です。一方、6,000万円までが非課税となるのは「特別障害者」です。

特別障害者以外の特定障害者

  • 児童相談所や知的障害者更生施設などで知的障害者とされた障害者
  • 精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている障害者 など

特別障害者

  • 児童相談所や知的障害者更生施設などで重度の知的障害者とされた障害者
  • 精神障害者保健福祉手帳の障害等級が1級の障害者
  • 身体障害者手帳が1級または2級の障害者 など

この制度を使う場合は信託銀行に資金を信託することが必要で、金融機関を経由して税務署に届け出ます。信託口座の資金は受贈者となる障害者の生活費や医療費として定期的に払い出されます。

贈与税がかからない場合

くり返しになりますが、暮らしのなかで必要な生活費や教育費に対しては、原則として贈与税はかかりません。ただ、たとえ学生であっても、親よりもはるかに収入が多い場合は、生活費や教育費としての贈与が認められない可能性もあります。

それ以外にも「祝儀金」や「弔意金」「香典」「お花代」「見舞金」などにも贈与税はかかりません。また「お中元・お歳暮」に関しても同じです。
これらのものは社会生活を送っていくうえで社会通念上必要なものと考えられているため、贈与税の対象とはならないのです。ただし、非常識と思えるほど高額な場合には課税対象となるので気を付けましょう。

贈与税の申告や納税方法

贈与税は原則として、自分から税務署に申告をして納めなければならない税金です。自分で贈与税の申告が必要かどうかを判断し、支払い義務があるとわかったら、税務署に対して申告をしなければなりません。

申告の時期ですが、贈与があった年の翌年2月1日から3月15日までの期間です(3月15日が土日祝日なら次の平日が申告期限)。申告期限を過ぎてしまうと、ペナルティとして追加で課税されることになるので必ず守るようにしましょう。

なお贈与税の申告と納税方法の詳細については、下記の記事で解説しています。そちらも参考にしてください。

おわりに:贈与の目的によっては非課税に。また特例などを上手く活用してみましょう

個人から個人へと財産が無償で渡される「贈与」において、その額によっては「贈与税」を支払う必要が生じてきます。たとえ親子間・夫婦間の贈与であっても例外ではありません。
ただし、すべの贈与において贈与税がかかるわけではなく、生活費や教育費など日々の暮らしのなかで必要なお金に対しては課税対象外となります。また「こういう場合、ここまでは税金がかかりません」という非課税枠も設けられています。贈与を考えている方は、そうした贈与税の仕組みを理解したうえで行うことが賢明といえるでしょう。

もし贈与に関して不安や戸惑いがあるという方は経験豊富な税理士に相談をすることも考えてください。専門知識と実績が豊富な税理士は贈与税の計算や特例の活用、節税につながる有効なアドバイスをさまざまに提供してくれます。また、申告のサポートも行ってくれます。さらに、将来の相続まで含めた節税対策の助言をしてくれる点でも心強い存在です。より安心できる贈与税対策のためにも税理士へのご相談をおすすめいたします。

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この記事を監修した⼈

税理士法人レガシィ代表社員税理士パートナー陽⽥賢⼀の画像

陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・

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武田 利之税理士法人レガシィ 社員税理士

相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。

<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表

<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表

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