空き家を相続したら?デメリットや対処法などを解説
空き家を相続した、または相続する予定がある場合、どのように対処すればよいのでしょうか。
対処法は、対象の空き家に資産価値があるかないかで異なります。本記事では、空き家を相続するデメリットやリスク、それらへの対処法、相続時に活用できる特例などについて詳しく解説します。
目次
空き家の相続によるデメリット
空き家を相続することには、次の5つのデメリットがあります。それぞれを詳しく解説します。
- 維持費や管理の手間がかかる
- 固定資産税がかかる
- 特定空き家に指定されるおそれがある
- 近隣トラブルのリスクがある
- 放置すると資産価値が下がる
維持費や管理の手間がかかる
空き家は、所有者に管理やメンテナンスの義務があるため、空き家を相続したら相続の権利がある方全員で維持・管理をしなくてはいけません。家の中の清掃、庭の雑草除去、立木の剪定などを行い、周辺に悪影響を及ぼさないよう適切な管理をする必要があります。
例えば、雑草や立木が敷地外に侵入して近隣住民に迷惑をかけたり、台風で建物の一部が飛んでいき隣の家の窓ガラスを割ったりした場合、すべて相続人の責任になります。遠方にお住まいの方や多忙な方は、維持・管理するのが困難であるため、外部に依頼するという選択肢もありますが、費用がかかってしまいます。
固定資産税がかかる
空き家を所有していると、固定資産税や都市計画税がかかります。固定資産税とは土地や建物など不動産に課される税金、都市計画税とは市街化区域内の土地や家屋に課される税金のことです。固定資産税も都市計画税も、1月1日時点で空き家を所有している限り、その年の分を納付しなければなりません。
ただし空き家であっても居住用の建物があると住宅用地にあたり、敷地面積が200㎡以下であれば特例で固定資産税は6分の1に軽減されます。更地にしてしまうと固定資産税は高くなりますが、建物があると軽減措置が適用される仕組みです。とはいえ、誰も居住していないのに継続的に税金がかかるのはデメリットのひとつです。
特定空き家に指定されるおそれがある
特定空き家とは、そのまま放置することでリスクが伴う、状態のひどい空き家のことです。具体的には、倒壊のおそれがある、衛生上有害となるおそれがある、著しく景観を損なっている、周辺の生活環境を守るために放置するのは不適切と判断された空き家を指します。
特定空き家に指定されるデメリットは、固定資産税が最大6倍になることです。空き家の固定資産税は6分の1に軽減される(敷地面積200㎡以下の場合)と前述しましたが、特定空き家には軽減措置が適用されません。管理が行き届いた綺麗な空き家であれば問題ありませんが、放置された空き家は特定空き家に指定され、税金で支出を強いられるリスクがあります。
近隣トラブルのリスクがある
空き家は近隣トラブルの原因にもなります。例えば、建物が傷んで倒壊する、タバコのポイ捨てによって火災が起こる、雑草が繁茂する、害虫が発生するなどです。適切な管理がされていない空き家の劣化は非常に早いため、短期間で廃墟化しまうことも珍しくありません。小さな地震で倒壊し、通りすがりの人にケガをさせてしまったり、隣の家を損傷させてしまったりするリスクがあります。また周辺環境の手入れが行き届いていなければ、害虫が発生するおそれもあります。近隣の資産価値が下がる原因にもなりうるため、近隣トラブルに発展しやすい点で問題です。
放置で建物の資産価値が下がる
相続した空き家を放置すると、築年数の経過とともに建物の資産価値が落ちてしまうデメリットもあります。一戸建て住宅の資産価値は、築10年で新築時の半分に、築20年でゼロになるとされています。人が住まず手入れもされずに放置された建物の劣化は非常に早く、放置すればするほど資産価値は急速に下落していきます。資産価値を下げないためにはこまめなメンテナンスが不可欠です。
空き家を相続したときの対処法
空き家を相続したときはどのように対処するのが適切なのか、対処法として次の6つの方法を紹介します。
- 相続から3年以内に売却する
- 賃貸物件として貸し出す
- 自分で住む
- 解体して土地を活用する
- 寄付をする
- 相続放棄をする
相続から3年以内に売却する
資産価値がある空き家は、早めに売却するのがおすすめです。今後住む予定や活用する予定がない場合は、相続開始から3年以内に売却することで、「空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除」を使える可能性が高いからです。またこの特例の対象外であっても当該不動産を相続した時に相続税を支払っている場合は、相続税を譲渡所得の経費とできる取得費加算の特例が適用可能です。なお空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除が適用可能であっても、これに替えて取得費加算の特例を適用することもできます。いずれかの選択適用となりますので、有利な方を選ぶことができます。
空き家(被相続人の居住用財産)の特別控除とは
空き家を売却し、利益(譲渡所得)が出た場合、税金(譲渡所得税)が課されます。しかし、相続開始から3年以内に売却し、一定の要件を満たせば、譲渡所得税の計算時に「空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除」が適用されます。その名の通り、譲渡所得から3,000万円が差し引かれる特例です。空き家を売却して3,000万円以上の利益が出ることは少ないため、特例が適用されると譲渡所得税を支払う必要がなくなるケースも多くみられます。
3,000万円特別控除は居住用住宅にもあり、複数ある要件を1つでも満たせば適用されますが、空き家の場合、それとはまた別の複数ある要件をすべて満たす必要があります。主な要件は、相続開始直前に被相続人の居住用だった家屋であること、昭和56年5月31日以前に建築された家屋であることなどです。
参考:国税庁『No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例』
賃貸物件として貸し出す
資産価値のある空き家は、賃貸物件として貸し出す方法もあります。賃貸に出せば、毎月家賃収入が得られるのがメリットです。しかし、ハウスクリーニングやリフォームなどの初期費用が必要だったり、トラブルが発生した場合は貸主に責任が生じたりするデメリットがあります。入居者がいないと家賃収入が入ってこないリスクもあります。また、賃貸物件にする場合、「空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除」の対象からは外れます。
自分で住む
売却や賃貸が難しい場合は、自分の居住用不動産にすることも可能です。特定空き家に指定されるのを回避するためには有効な方法です。思い出のある実家を残せるということは、自分だけでなく他の兄弟姉妹など、家族も喜ぶのではないでしょうか。
解体して土地を活用する
今後貸し出したり住んだりする予定がない場合は、解体して活用する方法があります。更地にしてから、売却するか駐車場にするかなど、活用方法を考えましょう。古家がある状態の土地よりも、更地のほうが買い手はつきやすくなります。しかし、解体費用を負担しなくてはいけないデメリットがあります。解体費用の相場は、一般的な木造住宅で100万円以上です。更地の場合、固定資産税が高くなる点にも注意が必要です。なお、要件を満たせば空き家の特別控除が使える可能性があります。
寄付をする
空き家は、個人、法人、自治体などに寄付することもできます。
個人への寄付は誰に対してでもでき、寄付先が隣人であれば、空き家分の土地とつなげて二世帯住宅にしたり駐車場にしたりと有効活用できるため、メリットは多大です。ただし、資産の受け渡しであるため、空き家の土地・建物の金額によっては贈与税がかかります。
法人への寄付は、営利法人への寄付と公益法人への寄付の2種類があります。営利法人へ寄付する場合、みなし譲渡所得税が発生し、寄付する側と受け取る側の両者に費用負担が生じるため、あまりおすすめできません。一方、公益法人へ寄付する場合は、みなし譲渡所得税が免除され、税金面では優遇されます。実際に公益法人が空き家を活用している事例は多くあります。自治体や町内会が空き家を活用するケースも多々あるため、寄付を受け入れてくれる可能性は高いでしょう。また、令和5年4月からは、土地を国に寄付する「相続土地国庫帰属制度」を利用できるようにもなりました。
相続土地国庫帰属制度とは
相続土地国庫帰属制度は、相続した土地を国に寄付できる制度です。相続人にとって不要な土地を国が引き取ってくれますが、対象となる土地には要件があります。建物がある土地、土壌汚染されている土地などは申請できず、また崖があり管理に費用や労力がかかる土地、地上や地下に管理や処分を阻害する有体物がある土地などは承認を受けられません。
申請は、相続または遺贈(遺言書による贈与)によって土地の所有権や持ち分を取得した人だけが行えます。費用は、審査手数料1万4,000円に加え、負担金原則20万円が必要です。負担金は80万ほどかかる場合もあり、建物の解体費や土壌汚染調査が必要となった場合はさらに高額になります。
相続土地国庫帰属制度について、詳しくは以下の記事もご覧ください。
相続放棄をする
空き家を相続する前であれば、相続放棄をする選択肢もあります。相続放棄をすれば、固定資産税や都市計画税を支払う負担もなくなります。しかし、相続放棄はすべての財産を放棄する必要があるため、空き家だけを放棄の対象とすることはできません。資産より負債が多い場合、相続争いに巻き込まれたくない場合などに相続放棄をするケースが多くみられます。相続できるものが空き家しかない、空き家以外は借金しかないという場合に検討しましょう。
空き家を相続したら相続登記が必要
空き家を相続したら、できるだけ早く法務局(登記所)で相続登記をしましょう。相続登記とは、相続する不動産を名義変更し、不動産の権利を第三者に対して明らかにすることです。相続登記をしないと売却や解体はできません。相続登記は令和6年4月から義務化され、3年以内に相続登記しないと10万円以下の過料が課されるため、注意が必要です。
また相続登記は早い段階で行わなければ、新たな相続が発生して手続きが複雑になる場合もあります。例えば祖父が持っていた土地を父が相続し、相続登記をしないまま父が無くなり、息子に引き継がれる場合なども多くあります。このような場合、遺産分割をやり直したり複数回にわたって登記手続きをしたりと、余計な手間や費用がかかる可能性があるため、早めに行うことが大切です。
相続登記について詳しくは以下の記事をご覧ください。
おわりに:空き家でも相続登記が必須に
空き家に資産価値があるかどうかで適切な対処法は変わるため、相続したらどのように対処すべきか、よく検討しましょう。また令和6(2024)年4月1日から相続登記が義務化され、空き家においても対応が必要になりました。放置しておくとペナルティが課される可能性もあるため、早めの対応がおすすめです。
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陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー
企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・
武田 利之税理士法人レガシィ 社員税理士
相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。
<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表>
<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表
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